第64回大会(上智大学)「テーマ部会」
▼テーマ部会A「現代都市における〈場所性〉・再考」
▼テーマ部会B「性的身体の現代的諸相-セクシュアル・マイノリティと生殖」
テーマ部会A
「現代都市における〈場所性〉・再考」
文責:山本 薫子
部会要旨
本テーマ部会では、現代の都市生活における〈場所性〉の意味や機能について多角的に再検討してみたい。21世紀の今日、従来の地域共同体(地縁等)とは異なり、またメディアが媒介するいわゆる〈無場所性〉の現象とも異なる、新たな関係性が都市空間のさまざまな局面で確認されつつある。それらは、一見、従来的な意味での地域を越えたつながりと見えるが、実際には特定の空間(〈場所性〉)を結節点として関係の形成、維持が図られている。これらの多くはメンバーの共通の関心をもとに自発的に形成されたものであり、関心縁や趣味縁とも重なる。こうした関心縁や趣味縁によって形成される関係性は、「新たな地縁」や「新たなコミュニティ」となりうるものなのだろうか? そして、そうした新たな関係性が結束力に伴う親密性と同時に排他性をも内包していることにも注目したい。それら両面の効果に関しても過不足なく検討していきたい。以上のような問題意識に基づき、本テーマ部会では主として都市文化や都市社会の文脈から現代の〈場所性〉を再考し、その特質と課題について多角的に議論を深めていくことを目指したい。
そこで、大会シンポジウムでは都市における商店街をめぐる近年の変化に着目したい。今日、再開発、ジェントリフィケーション、セキュリティなど、先進諸国の都市における商業空間をめぐる問題が数多く指摘されている。同時に日本の商店街では高齢化、衰退などの課題が目立つと同時に、イベント等の地域おこし、福祉的ニーズへの対応や居場所づくり、観光化等の変化や新たな取り組みも生まれている。このような状況、変化を踏まえ、今回のシンポジウムでは現代日本の都市における商店街の〈場所性〉について多角的な視野から議論を行うと同時に、都市における〈場所性〉の再考へつながる論点を検討したい。
報告者および題目
ノイズとしてのパブリックスペース
―「空間」争いの時代に商店街を考える―
町村 敬志(一橋大学)
商店街地域における利用・管理の新たな様相
新 雅史(学習院大学)
新規開業者による場所のリノベーション
――東京・下町の事例から
下村 恭広(玉川大学)
討論者:若林 幹夫(早稲田大学)、窪田 亜矢(東京大学)
司会者:山本 薫子(首都大学東京)、原田 峻(立教大学)
テーマ部会B
「性的身体の現代的諸相
-セクシュアル・マイノリティと生殖」
文責:苫米地 伸
部会要旨
本テーマ部会のねらいは、「性的身体」に対する規範的なまなざしや介入を問うことで、排除や暴力をめぐる現代的な課題を考察することです。
関東社会学会大会でのテーマ部会で取り上げられたテーマを過去にさかのぼって見てみると、ジェンダーがテーマとなった直近の大会は、専修大学で開催された2004年度の第52回大会「ジェンダー不平等の多面性」でした。それ以来、実に10年以上の間、関東社会学会大会テーマ部会では、ジェンダーあるいはセクシュアリティの問題はテーマとして取り上げられてこなかったことになります。
その一方でジェンダーあるいはセクシュアリティをめぐる社会の状況が、大きく変化してきたのは周知のことでしょう。「LGBT」あるいは「LGBTQ」という言葉も社会的に認知されるようになり、先年には渋谷区議会で「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が可決・成立したことは、記憶に新しいものであると思います。
つまり、日本社会は、多様な「性的身体(身体は性的である)」への寛容さを増しつつあるよう思われます。それに応じて、以前には可視化されなかった(語られることのなかった)問題も、少しずつ見える(聞きとれる)ようになりました。このテーマ部会では、新たに見えるようになったこの「性的身体」をめぐる問題について考えていきたいと思います。
上記のような問題設定にもとづき、第64回大会2日目午後(6月5日)に開催されるテーマ部会では、三部倫子さん(日本学術振興会特別研究員PD)、加藤秀一さん(明治学院大学)に「生殖」という領域に焦点を当てたご報告をお願いしました。三部さんには『「できたから産む」のか「欲しくて産む」のか―子どもを産んだセクシュアル・マイノリティの語りからみる選別・結婚・子ども』と題して、豊富なフィールドワークの成果から、セクシュアル・マイノリティの人々の結婚や出産に関する語りの分析を通じて、日本社会における性や家族をめぐる規範の変化と生じつつある新たな可能性についてご報告をしていただきます。「〈誤った生命〉とは誰の生命か―ロングフル・ライフ訴訟の定義から見えるもの」(『概念分析の社会学2』勁草書房)を執筆された加藤さんには『生殖テクノロジーが問いかけるもの―生む/生まれる〈権利〉をめぐって』と題して、ARTに関する問題群とその論じ方を整理した上で、「第三者配偶子を用いる生殖医療」とりわけ提供精子を用いた人工授精の現状とそれをめぐる社会学・法学・倫理学の議論の紹介・検討をご報告していただきます。討論者として、森岡正博さん(早稲田大学)と遠矢和希さん(国立循環器病研究センター研究員)をお迎えしております。
当日は活発な議論が期待されます。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。
討論者と司会
討論者:森岡 正博(早稲田大学)、遠矢 和希(国立循環器病研究センター)
司会者:杉浦 郁子(和光大学)、苫米地 伸(東京学芸大学)