研究活動

年次大会

第65回大会(日本大学)「テーマ部会」

▼テーマ部会A「現代都市における〈場所性〉・再考」
▼テーマ部会B「性的身体の現代的諸相―制度的場面における“性暴力”の操作・管理・運用―」

テーマ部会A
「現代都市における〈場所性〉・再考」

担当理事:芳賀 学(上智大学)、山本 薫子(首都大学東京)

文責:芳賀 学

部会要旨

本テーマ部会では、現代の都市生活における〈場所性〉の意味や機能について多角的に再検討してみたい。21世紀の今日、従来の地域共同体(地縁等)とは異なり、またメディアが媒介するいわゆる〈無場所性〉の現象とも異なるような関係性が、都市化した社会空間のさまざまな局面で確認されつつある。それらは、一見、従来的な意味での地域を越えたつながりと見えるが、実際には特定の空間(〈場所性〉)を結節点として関係の形成や維持が図られている。これらの多くは、メンバーの共通の関心をもとに自発的に形成されたものであり、選択縁や趣味縁といった議論とも重なる。こうした関係性は、「新たな地縁」や「新たなコミュニティ」となりうるものなのだろうか?本テーマ部会では、その実態に迫ると同時に、そうした関係性が結束力に伴う親密性と同時に排他性をも内包していることにも注目したい。
 以上のような問題意識に基づき、本テーマ部会では、主として、文化研究と都市研究とがクロスするテーマとして、現代社会における〈場所性〉を取り上げ、その特質と課題について多角的に議論を深めていくことを目指したい。
 特に、今年度の大会時テーマ部会では、宗教的/非宗教的聖地、小演劇と下北沢、同人活動とコミックマーケットといった、特定の文化が特定の物理的空間(街、建物など)と密接にかかわりを持つような社会現象を取り上げたい。現代日本社会においては、地域共同体の解体と各種メディアの発達によって、文化現象と物理的空間との関わりに多大な変化が生じてきたが、それは、地域からメディアへといった単純かつ単線的な変化ではない。今回のテーマ部会では、これらの事例における〈場所性〉について多角的な視野から議論を行うことで、物理的空間とメディアの棲み分け・使い分け(組み合わせ)や、そもそもこうした棲み分け・使い分けが現代に特有の現象であるのか否かといった問題を含めて、現代社会における〈場所性〉の再考へつながる論点を検討していきたい。

報告者および題目

フィクションが作る聖なる場所
―聖母出現、パワースポット、アニメ聖地―

岡本 亮輔(北海道大学)

下北沢の「場所性」に関する一考察
―在京劇団の実態調査の結果を踏まえて

田村 公人(フェリス女学院大学など)

非排除的な「ハレの日」としてのコミックマーケット
―文化生産と空間という観点から―

七邊 信重(マルチメディア振興センター)

討論者:山田 真茂留(早稲田大学)、吉見 俊哉(東京大学)
司会者:芳賀 学(上智大学)、久保田 裕之(日本大学)

テーマ部会B
「性的身体の現代的諸相
―制度的場面における“性暴力”の操作・管理・運用―」

担当理事:苫米地 伸(東京学芸大学)、杉浦 郁子(和光大学)

文責:杉浦 郁子

部会要旨

関東社会学会テーマ部会Bでは、「性的身体に対する規範的なまなざしや介入を問うことで、排除や暴力をめぐる現代的な課題を考察する」というねらいのもと、具体的なフィールド報告を取り上げています。昨年度は「生殖」に関わって新たに浮上している問題に注目しましたが、今年度は「暴力」にかかわる問題を中心に据えて議論をしています。
 2017年6月のテーマ部会では、制度的場面(教育、法、医療など)において、「性暴力」についてどのような操作・管理・運用がなされているのか、という問いを立て、考察を深めたいと思います。現時点で想定している論点を具体的に挙げれば、たとえば、各領域の専門家たちは、「性暴力」を扱うさいにどのような専門的/日常的な知識を参照しているのか、「被害」や「加害」の認識はどのようになされるのか、それが専門家の「仕事」にどのように組み込まれているのか、その「仕事」はどんな社会関係のなかで組織されているのか、などです。こうした議論を通して、「性」や「身体」の現代的なありように迫ることを目指します。
 ご報告をお願いしたのは、『刑事司法とジェンダー』(インパクト出版会、2013年)の著者である牧野雅子さん(大阪府立大学)と、『養護教諭の社会学―学校文化・ジェンダー・同化―』(名古屋大学出版会、2014年)の著者、すぎむらなおみさん(愛知県立日進高等学校養護教諭)です。牧野さんには、ある「性犯罪」事件加害者への調査結果にもとづき、刑事司法過程、とりわけ捜査機関の性暴力認識とその生成過程について議論していただきます。すぎむらさんには、学校内で生徒に性暴力被害を相談されやすい養護教諭へのインタビューから、被害にあった生徒の存在に気づくことや支援の難しさについて議論していただきます。討論者には、小宮友根さん(東北学院大学)、中西祐子さん(武蔵大学)、上谷香陽さん(立教大学他非常勤講師)をお迎えします。
 多くの皆さまの参加をお待ちしています。

報告者および題目

刑事司法の性暴力認識 ―「性犯罪」加害者に着目して―
牧野 雅子(大阪府立大学)

学校における「難問」としての性暴力
―被害にあった生徒に対する支援者は不在だったのか―

すぎむら なおみ(愛知県立日進高等学校養護教諭)

討論者:小宮 友根(東北学院大学)、中西 祐子(武蔵大学)、上谷 香陽(立教大学ほか非常勤)
司会者:鶴田 幸恵(千葉大学)、湯川 やよい(東京女子大学)