研究活動

研究例会

2025年度 第1回研究例会
障害とジェンダー・セクシュアリティ:交差性を考える

 本テーマ部会では、2年間を通して、障害や病むことと、ジェンダーやセクシュアリティの交差性(インターセクショナリティ)について考えていきたいと思います。
 ひとつには、障害や病いを抱えて生きることと、ジェンダーやセクシュアリティのありようとが交差することによって生じる、複合差別の問題があります。障害を持つ女性たち、あるいはセクシュアル・マイノリティと呼ばれるとともに障害も持っている人たちなど、多くの人たちの経験が、これまで見過ごされてきました。これらの人たちの経験を知ることで、運動や学問のありようを捉え返すことは、今日改めてその必要性が指摘されています。
 ただ、このテーマはそれだけにとどまらない広がりを有していると私たちは考えています。障害学disability studiesとジェンダー・セクシュアリティ研究 gender and sexuality studies(あるいはフェミニズム/クイア研究 feminism and queer studies)は、お互いに理論的にも大きな影響を与えあって発展してきました。それぞれの理論的な背景や違い、そして共通性やお互いに貢献し合える点など、まだ多く検討すべき課題が残されています。
 また、これらの学問は、当該領域にかかわる社会運動とも不可分でした。実際、障害者解放運動とフェミニズムの運動、あるいはセクシュアル・マイノリティの運動とは、さまざまな形で交差してきた歴史があります。こうした点にも目を向けることで、社会運動や制度の変化などにも新たな視点が得られることと思います。
 そして、障害や病いとともに生きる人たちにとって、ジェンダーやセクシュアリティの問題は生きる上で重要なことであるにもかかわらず、無視され否定されたり、あるいは「過度に」肯定されたりきました。そのため支援の現場では、ジェンダーやセクシュアリティをめぐる問題は、非常に複雑な様相を示しています。そして、ジェンダーやセクシュアリティの観点からマイノリティと呼ばれてきた人たちも、自身の障害や病い、あるいは一方的に「障害」や「病い」と括られることについて、さまざまな形で向き合ってきました。現場で生じる事柄についても、複合差別という論点に限ることなく、広い視野から問うていけたらと考えています。
 研究委員たちは交差性の専門家ではありません。そのため、テーマ部会Bは、研究委員が会員の皆さんとともに学んでいく場としていきたいと考えています。障害や病いに関心を持つ方々、ジェンダーやセクシュアリティに関心を持つ方々、また交差性に広く関心を持つ方々など、ぜひご参加いただき、一緒に考えていただければと思います。

 3月の研究例会では、障害があるセクシュアル・マイノリティの人たちや女性の障害者へのインタビューを重ねてきた欧陽珊珊さんに、執筆中の博士論文の内容を中心にお話を伺う予定です。

開催日時

2026年3月15日(日)13:00~16:00

報 告

欧陽珊珊(立命館大学)

討論者

瀬山紀子(埼玉大学)・福永玄弥(東京大学)

司会

石島健太郎(東京都立大学)・三井さよ(法政大学)

会 場

東京都立大学南大沢キャンパス5号館142教室

連絡先

町田市相原町4342 法政大学社会学部
三井さよ研究室(s-mitsui[at]hosei.ac.jp)[at]を@に置き換えてください

担当研究委員

担当理事:三井さよ(法政大学)、石島健太郎(東京都立大学)
研究委員:郭立夫(筑波大学)、柳采延(常葉大学)

◆報告要旨

Coming Soon

欧陽珊珊(立命館大学)

Coming Soon

 (文責:三井さよ)

2025年度 第2回研究例会
移民・エスニシティ:「多文化共生」を問い直す
――移民・難民の貧困と福祉制度からの排除――

 本テーマ部会では、2年間を通して、「『多文化共生』を問い直す」というテーマで、移民とエスニシティをめぐる問題を多角的に検討していきたいと思います。
日本において、1980年代のニューカマー外国人の増加から、すでに半世紀近くが経過しています。しかし移民統合政策を欠いてきたことの帰結として、「多文化共生」や「社会統合」をめぐる言説にしばしば同化主義や排除の論理が入り込んでいることが議論されています。また、「日本型」と言われてきた排外主義やレイシズムの質が、欧州型に変容しつつあるとの指摘もあります。
 以上の問題意識から、2年間にわたる部会Aでの研究活動では、各回設定するサブテーマを軸に、研究例会や年次大会を通じて多角的な議論を展開していく予定です。
 たとえば、近年、「福祉排外主義」が台頭する中で、外国人の貧困問題をめぐる構造的分析は、きわめて現代的かつ喫緊の課題として注目されています。加えて、ジェンダー、セクシュアリティ、障害、病いといったインターセクショナリティの視点から「多文化共生」を再考する試みも、社会学において重要な位置を占めています。都市・郊外・農村といった空間的文脈や、公営住宅などの集住地/散在地といった場所性が共生のあり方に与える影響についても、さらなる明確化が求められています。人種、レイシズム、ミックスルーツに関する理論的・実証的な研究の深化も不可欠です。また、越境者による食・アート・スポーツなどの実践を通じた文化の表出行為にも関心が高まっており、これらの営みが共生社会の形成に果たす役割についての検討が進められています。さらに、当事者研究やオートエスノグラフィなど、「移動する〈わたし〉たち」の語りをいかに描き出すかという方法論的課題も、今後の重要な研究テーマとなるでしょう。
 以上、現段階では課題を網羅的に提示するにとどまりましたが、本テーマ部会Aでは、これらの既存の研究視角を批判的に捉え直し、移民・エスニシティ研究の新たな地平を切り拓くことを目指します。
 そのキックオフ企画として、第2回研究例会では「移民・難民の貧困と福祉制度からの排除」をサブテーマとして設定し、現場での実践と理論的分析の両面から議論を深めます。近年、日本社会における移民・難民の生活困窮や社会的排除といった課題も深刻化しています。とくに、「福祉排外主義」と呼ばれる福祉制度へのアクセスをめぐる排外的な言説や政策の動向は、移民・難民の貧困を構造的に再生産する要因ともなっています。
 そこで、移民の貧困や生活保護について実証的、かつ実践的に研究されている研究者2名をお招きし、移民・難民が直面する貧困の実態と、それに対する福祉制度の対応、さらには排外的な現象との関係についてご報告いただきます。加えて、日本における貧困をめぐる歴史的視点にもとづくコメントを通じて、今後の研究課題についての議論を深めていきます。
 多くの皆さまのご参加と対話を歓迎いたします。

開催日時

2026年3月28日(土)14:00~17:00

報 告

大澤優真(一般社団法人つくろい東京ファンド事務局長/立教大学) 、山本直子(東洋英和女学院大学)

コメンテーター

冨江直子(茨城大学)

会 場

Zoomによるオンライン開催

【申込方法後日告知】

連絡先

横浜市立大学 坪谷美欧子研究室
横浜市金沢区瀬戸22番2号
E-mail: tsuboya[at]yokohama-cu.ac.jp ※[at]を@に置き換えてください

担当研究委員

担当理事:坪谷美欧子(横浜市立大学)、藤浪海(関東学院大学)
研究委員:大野恵理(獨協大学)、山本直子(東洋英和女学院大学)

Coming Soon

大澤優真(一般社団法人つくろい東京ファンド事務局長/立教大学)

 Coming Soon

Coming Soon

山本直子(東洋英和女学院大学)

 Coming Soon

(文責:坪谷美欧子)