研究活動

研究例会

2019年度 第2回研究例会
ワークショップ時代の統治と社会記述

 テーマ部会Bでは、様々な領域で様々なアクターを巻き込んで広がるワークショップ等の参加型の取り組みを切り口に、社会学はいかに関わりそれをいかに記述するかを皆様と考えてみたいと思います。
 背後には、現代社会の社会記述の難しさという問題関心があります。歴史社会学や言説史といった視角が盛り上がった時期を経て、2000年代後半以降、そのようなマクロな社会記述に関する関心は後退しているように見えます。今や、肯定的にであれ、否定的にであれ、「〇〇化社会」式のグランドセオリーは結論にはなりえません。「後期近代」「グローバル化」「消費社会化」などは自明の環境条件となっており、「新自由主義」だという批判も、それが私たちの日常に根付き、そのなかで切実な実践が行われている現状に対し、空を切ってしまう感があります。同時に、かつてそのような診断の肯定的帰結として、ないしそれらに対する批判的対抗言説として、しばしば提起されてきた「自治」「参画」「選択」「多様性」などの諸価値は、むしろ制度化され、統治のモード、生の形式に組み込まれています。このようななか、中間領域の記述で力を発揮してきた社会学は、コンサルタントやマネジメント系の論者に場を明け渡してしまったようでもあります。
 しかし、いわゆる連辞符社会学で分断されがちなそれぞれのテーマ領域で、それぞれの研究者が、このような複雑に絡み合った現代社会の人とモノとのつながり、統治の技法、生のありようを記述しようと、時に現場に身を置きながら、時に現場との距離を感じながら、奮闘しているはずです。それらをテーマ横断的に結びつけ、現代の様々な実践や社会のありように対して、社会学がどのように関わっていけるのかをめぐる議論を共有してみたいと思います。
 研究例会では、2人の登壇者をお招きして、「ワーク」という市民参画やまちづくりとは一見かけ離れて見える領域と、「アート」という核の1つであり続けてきた領域の、現在進行形の事例をお話していただきます。そのうえで、ワークショップ時代らしく(?)あえて討論者を置かずにファシリテーターを配置し、参加者の皆さまと一緒に既存の図式をいかに問い直し、具体的などのような点に注目していけばいいのかをブレインストーミングしていきたいと思います。学会大会時のテーマ部会へのキックオフミーティングの位置づけでもありますので、少しでもご興味のある方は、ぜひご自身の事例もお持ちになって、議論にご参加いただければと存じます。

開催日時

 2020年8月22日(土) 14:00~17:00

報 告

松下 慶太(関西大学)
「ワーケーションにおける『スタイル共同体』の形成」
高橋かおり(立教大学)
「芸術を通じた場の構築――地域に対する現代美術とクラシック音楽の試みを比較して」

ファシリテーター

加島卓(東海大学)、元森絵里子(明治学院大学)

会 場

オンライン形式で開催(zoomなど)
研究例会に参加を希望される方は、8月16日(日)までに元森(motomori[at]soc.meijigakuin.ac.jp)まで、①お名前、②ご所属、③開催情報をお送りするメールアドレスを、ご連絡ください。前日までにオンライン参加に必要な情報をお知らせします。

【締め切りました】

連絡先

明治学院大学社会学部 元森絵里子
E-mail: motomori[at]soc.meijigakuin.ac.jp ([at]を@に置き換えてください))

担当研究委員

担当理事: 加島 卓(東海大学)、元森絵里子(明治学院大学)
研究委員: 仁平典宏(東京大学)、牧野智和(大妻女子大学)

◆報告要旨

「ワーケーションにおける『スタイル共同体』の形成」

松下 慶太(関西大学)

 ワークショップ時代の地域づくりやコミュニティデザインにおいて、移住してきた人を含む住民だけではなく、その地域・コミュニティに一時的に滞在する人を増やしたり、巻き込んだりしながら進めていくアプローチへの注目が高まっている。その背景のひとつが「関係人口」「多拠点生活」「副/複業」といったワークスタイルにおける新たな動きである。本報告ではWork(仕事)とVacation(休暇)とを併せた造語である「Workation(ワーケーション)」を取り上げる。ワーケーションは、地域にとっては地域活性化政策の一環として、企業にとってはビジネスだけではなく人材育成、労務管理施策の一環として、またワーカーにとっては新たなキャリアやワークスタイルの一環として捉えられる。そこに地域住民も含んだそれぞれの相互作用に注目しながら、ワークショップ時代の地域づくり・コミュニティデザインの新たな局面としてワーケーションを検討していく。

「芸術を通じた場の構築――地域に対する現代美術とクラシック音楽の試みを比較して」

高橋かおり(立教大学)

 2000年代以降、日本各地で芸術や文化を用いたイベントやフェスティバルなど、いわゆるアートプロジェクトが増加した。これらのアートプロジェクトは、成果物としての作品のみならず、その製作・議論の過程を重視する。それだけではなく、その活動の記録や評価でも、情報共有や振り返りを行い、当事者間で「良いとされる価値」を醸成している。アートプロジェクトにおけるこれらの実践はまさに、ワークショップ時代を象徴する活動といえるだろう。
 このような現状に対して、社会学の立場からはどのようなアプローチできるのだろうか。
 本報告では、日本におけるアートプロジェクト研究とその展開を追ったうえで、同じアートフェスティバルにおける美術と音楽のワークショップ的活動をそれぞれ事例にし、場の構築過程を社会学的に記述・分析する方法を共に考えたい。そのうえで、今日のワークショップが生み出す可能性を考察しつつ、その問題点を共に考えたい。

(文責:元森絵里子)