研究活動

研究例会

2017年度 第2回研究会
移民・難民と人間の尊厳

  テーマ部会Bでは昨年より「人間の尊厳」を共通テーマとして掲げています。昨年の研究例会および学会大会では、移民・難民を事例に、アーレントの政治思想から各国の移民・難民をめぐる政策や社会運動において「尊厳」という語がもっている政治的・社会的な機能まで幅広い議論が行われました。
 その成果を踏まえつつ、今期は、「life(生活・生命・人生)」という観点から尊厳の社会学を展開したいと考えています。「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等」(世界人権宣言)であり、また「人間の尊厳は不可侵である」(ドイツ連邦共和国基本法)ということは、現代社会においては譲ることのできない規範となっています。しかし、社会学的な観点からすれば、そうした尊厳や「自分らしさ」の尊重が日々の生活を形づくる相互行為やコミュニケーションを通じていかにして達成されるかが大きな問いになりえます。中でもさまざまな障害を抱える人々にとって、自分らしい生を他者との関わりの中でいかにして実現するかという問いは、今もなお極めて切実なものであり続けています。その一方で、近年では、介助者や介護者が当事者の主体性や人格を尊重しようとする思いが、かえって支援のあり方を硬直的なものにしてしまう可能性も指摘されています。また、そもそも何をもって「自分らしさ」や「人間らしさ」と考えるかは、その時代その時代の社会意識にも大きく規定されていると考えられます。
 以上のような「life」をめぐるさまざまな論点を踏まえ、今期のテーマ部会Bでは、「人間の尊厳」を問い直し、同時に、尊厳という観点から「life」に対する社会学的理解を深めていきたいと考えています。第2回研究例会では深田耕一郎さん(女子栄養大学)と染谷莉奈子さん(中央大学大学院/日本学術振興会特別研究員)に報告していただきます。皆さまのご参加をお待ち申し上げます。

開催日時

 2018年3月21日(水)14:00-17:00

報 告

飯尾真貴子(一橋大学大学院/日本学術振興会特別研究員DC2)「アメリカ合衆国の非正規移民をめぐる包摂と排除の境界線と抵抗の実践――若者移民によるドリーマー運動に着目して」

河合恭平(川崎市立看護短期大学)「尊厳概念における人間と生命――移民・難民・亡命者に関するアーレントの記述から」

討論者

 本田量久(東海大学)、小山裕(東洋大学)

司会

昔農英明(明治大学)、石島健太郎(帝京大学)

会 場

東洋大学白山キャンパス6号館621教室
http://www.toyo.ac.jp/site/access/access-hakusan.html

連絡先

東海大学 〒151-8677 東京都渋谷区富ヶ谷2-28-4
本田量久研究室(E-mail: kazuhisa-h(アットマーク)tokai-u.jp)

担当研究委員

担当理事: 本田量久(東海大学)、小山裕(東洋大学)
研究委員: 昔農英明(明治大学)、石島健太郎(帝京大学)

◆報告要旨

「アメリカ合衆国の非正規移民をめぐる包摂と排除の境界線と抵抗の実践――若者移民によるドリーマー運動に着目して」

飯尾真貴子(一橋大学大学院/日本学術振興会特別研究員DC2)

 近年の米国における移民規制の厳格化と特定の移民層に対する暫定的権利付与プログラム(DACA)を概観することで、どのように非正規移民に対する包摂と排除の線引きがなされてきたのかを明らかにする。そのうえで、「ドリーマー」と呼ばれる幼少期に両親に連れられて米国に移住した若者移民らが牽引する移民運動に着目し、かれらがいかにしてこのような線引きに抵抗する主体として立ち上がってきたのか論じる。このような米国社会における非正規移民の包摂と排除の境界線をめぐる論理とそれに抵抗する実践を実証的に検討することで、現代社会における「人間の尊厳」の限界とその可能性を考える一助としたい。

「尊厳概念における人間と生命――移民・難民・亡命者に関するアーレントの記述から」

河合恭平(川崎市立看護短期大学)

 尊厳概念の根拠づけに関して、人間および生命をめぐる議論がある。J・ハーバーマスやC・メンケらが触れているように、H・アーレントは、特に両大戦における難民、絶滅収容所等の経験からあからさまになった人権と尊厳の凋落を問題視した。そして彼女は、人権と尊厳が、生命よりも人間によって根拠づけられる必要があると論じた。本報告では、かかるアーレントの主張を構成する論理を解明し、その妥当性および実現性を検証する。その際、テーマに則し、主に、彼女による移民、難民、亡命者に関するテクストを素材とする。

(本田 量久(担当理事))